「行軍」

侵攻作戦というものは、明けても暮れても行軍の連続である。
行軍の先頭が敵にぶつかると、後ろのほうは行軍をとめ、戦闘部隊の戦闘が終わるまで大休止となる。余りに行軍が続くと苦しくなってきて、早く敵が出てくれないかなぁと思うようになる。行軍の先頭になる事はめったにない。
ところが、この時は旅団の先頭に立った尖兵となって、見渡す限りの麦畑の中を進んでいた。
敵にぶつかり撃ち合いが始まった。三時間ぐらいで敵はいなくなった。
夕暮れがせまってきた。やれやれ一休みができる。と思った。
ところが、後続の旅団主力は敵を私共に任せて、別の道をどんどん進んでいった。直ちに追及せよとの命令である。
夕食もそこそこにしてまた行軍だ。連日の強行軍のところに、敵にぶつかってひと戦争やり、心身ともに疲労困憊であった。
「部隊に追いつくのには徹夜で歩き続けなければならない。」とは中隊長の言である。
覚悟を決めて歩きだした。

星が降るような夜空の下、もくもくと歩き続けた。
夜は昼にように暑くはないが、とにかく眠い。
「小休止」という前方からの逓伝を聞くのと同時にばたばたと背嚢を負っ
たまま後ろに倒れすぐに深い眠りに入る。
なぜか寝るのに具合がよかった。また起きて歩く。こんな事を繰り返していた。
半分眠ったようになって歩いていると、突然麦畑がひろびろとした湖にみえてきた。
水を満々と湛えた湖水のほとりを歩いたような気がした。

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