2000/12/08

『ルーズベルト大統領は日本の眞珠灣攻撃を事前に知ってゐたか?』

1. 「Rooseveltは 十二月八日の開戰は知ってゐたが 眞珠灣が攻撃されるとは思ってもみなかった。」と謂ふのが米國歴史學者多數派の見方である。
Roosevelt周辺の情報は 扶桑社から出版豫定の 産經新聞取材班編「ルーズベルト秘録」の中で 最新情報を驅使して 詳しく檢證されてゐる。
米國内の反戰世論に氣を配りながら 何とか歐洲戰線に參戰したいRooseveltだが 度重なる挑發をHitlerに躰よく躱されて、歴史學者に「裏口からの歐洲への參戰」と呼ばれる日本への挑發、それも「最初の一發を日本に撃たせる」仕掛けに お人好し日本が まんまと嵌ったと謂ふ構圖が 具に檢證されてゐる。
ワシントンの大使館と外務本省との聨絡は 海軍が開發して外務省に貸與した「九七式歐文印字機」と謂ふ機械暗號が使はれてをり これは 日米交渉が始まるかなり以前から破られてをり情報は筒抜けであった。 しかし 通常のやり取りは日本語をローマ字に置き換へて打電してゐたので 隨所で誤譯を それも 時として 意圖的誤譯をやらかしてゐた事は 後の極東國際軍事裁判A級法廷 等で暴露される事になる。
十四部からなる「最後通牒」は加瀬俊一北米課長が飜譯した英文をその儘打電してゐるので その内の十三部は米國東部標準時間十二月六日(土)晝にはワシントンの米海軍諜報部(OP-20-G、Code and Signal Section; Station NEGAT)によって解讀が完了し 海軍作戰部長、海軍長官、大統領と 夕刻までには 順次 回覽を終はってをる。
「regrets that the Japanese goverment cannot but consider that it is impossible to reach an agreement through further negotiations.」で終はる 第十四部と「最後通牒手交時間ヲEST13:00」と指示する電報は ワシントン時間七日(日)早朝には解讀を終はってゐる。
東部標準時間午後一時(EST071300、JST080300)と指定したのはHawaii時間七日07:30AM 即ち 眞珠灣攻撃開始三十分前と謂ふ事になるわけである。

2.  それに先立ちOP-20-Gでは添付寫眞の通り「新高山登レ一二○八」を傍受解讀してゐる。  これは 十二月二日の御前會議での「開戰廟議決定」を承けて 豫め準備された軍令部総長から聨合艦隊司令長官宛の封書命令書が 開封指定時刻 021500(十二月二日午後三時)に開封されて 021730 に發令。  東京通信隊船橋電信所から 長波(潜水艦宛)、中波(近距離艦處宛)、短波(中距離艦處宛)、超短波(遠距離艦處宛)東通第一放送系四つの電波で「海軍暗號書D 一般亂數表第七號」(D-ラ七)を使って暗號化され送信されたものの内 短波4155 kcsで發信されたものをサンフランシスコ郊外Bainbridgeの傍受アンテナが捉へ OP-20-G宛 直通回線で轉電されたものである。
原文が「一二○八」であるのに對し、解讀電報では「repeat 1208」となってをり暗號係が重要電報なので 取り違のないように原文に「繰リ返ス一二○八」を付け加へて發信したものと推測される。
暗號電報に數字を反復する事は禁物で 通常は日にちには「暦日換字表」を使って二重に暗號化するのであるが、何故だか この電文は「生數字」が暗號化されて送信されてゐる。
因みに 陸軍では 豫め十二月一日「ヒロシマ」二日「フクヲカ」三日「ミヤザキ」四日「ヨコハマ」・・・・と隱語が組まれ 同じ電文を「ヒノデハヤマガタ」として それを陸軍暗號に組んで發信されてゐる。 この點に關しては 陸軍の遣り方の方が賢明で
あったと言へる。

3. この「新高山登レ一二○八」と 最後通牒手交時刻に關する情報がtimelyに米太平洋艦隊司令部(諜報部;Station Hypo)に齎されてゐたら眞珠灣の悲劇は避けられた と謂ふのが一部歴史學者の主張であり OP-20-GとHypoの 根深い感情的對立の構圖が現代の戰史學者の間にも その儘 受け繼がれてゐる。
それが『Rooseveltは眞珠灣攻撃を事前に知りながら 故意にそれを隠した。』と Rooseveltのnegligence、cover-upとして彈劾するのが少數派 (revisionists)の主張である。

國際法上は「宣戰布告」前の攻撃は大いに問題であるが 實際には 早くも日本時間の六日午後 印度支那半島南端を西針中の南遣艦隊は 觸接中の英軍哨戒偵察機に對空砲撃を加へ 更には旗艦「鳥海」に座乘の小澤治三郎司令長官は 無線封止を破って JST061345 作戰緊急信を發し南部佛印に展開中の麾下第二十二航空戰隊に撃墜を命じてゐる。
菅原道大中將率いる 陸軍第三飛行集團の戰鬪機はJST071030 上陸部隊輸送船團に接觸中の英軍哨戒飛行艇を撃墜。  上海ではJST080015共同租界に武力進駐開始、馬來亞半島KotaBaruではJST080140に上陸支援砲撃開始してゐる。 これらの情報に米國が反應しなかったと謂ふ事は 矢張り 臨戰緊迫感が缺如してゐたと謂ふ事であらう。
眞珠灣でも 空爆開始一時間前に 哨戒驅逐艦Wardが灣口で 特殊潛航艇を攻撃撃沈してゐるのである。
英國に對しては 全くの無通告攻撃であり、『大詔煥發』即ち 正式の宣戰布告が日本時間十二月八日午前十一時四十分である事は事實である。 しかし米合衆國に對しては「通商交渉」繼續中と謂ふ事もあり 事前に 交渉打切の最後通牒を出す手筈になってゐた。
華府大使館の不手際で 最後通告手交が遅れた事は事實であるが、これをもって『騙し討ち』と謂はれる理由はない。 剩へ 極東國際軍事裁判A級法廷で 開戰當時の北米局長山本熊一證人 竝に 外務大臣 東郷重徳被告の勘違いで「統帥部は無通告攻撃を意圖してゐた。」との證言が飛び出したり 直接の責任者である在華府日本大使館が不問に附される等 未だに「Remember Pearl Harbour」を聞かされる度に 日本國民は やり切れない思いをさせられてゐる。


添付寫眞説明:
米國海軍通信部(Office of Naval Communications通稱ONC)が傍受解讀した電信。
作戰緊急信發信番号二四GF機密第六七六番電 聨合艦隊電令作第一○號

Combined Fleet Serial # 10.
Climb NIITAKAYAMA 1208, repeat 1208
Comment; Interpreted freely, above means "Attack on 8 December"
Explanation; This was undoubtedly the prearraged signal for specifying the date for
opening hostilities.
However, the significance of the phrase is interesting in that it is so appropriately used
in this connection.
NIITAKAYAMA is the highest mountain in the Japanese Empire.
To climb NIITAKAYAMA is to accomplish one of the realest feats.
In other words undertake the task (of carrying out assgined operations).
1208 signifies twelfth month, 8th day, their time.

(注) ”the significance of the phrase”の意味は この有名な電報の前に
「聨合艦隊電令作第五號 十一月二十一日○○○○第二開戰準備」が
「富士山登レ一一二一」として全艦隊宛發信されてゐた經緯を謂ってゐる。
第二開戰準備とは 眞珠灣、馬來亞半島攻略部隊等に 豫め指示された手順での出撃を命ずる「作戰發起」命令。

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